東京都 宇田川先生

主に不登校の子供学力についてインタビューしてみました。実際に教えてみての手応え、子供の学習意欲、厳しい現実問題について。宇田川先生は不登校の子供たちを預かるフリースクールで、勉強の面を主に担当しています。経験豊富で、問題を背負った子供たちに対しての丁寧な指導は定評があります

━宇田川先生が担当している子供たちの年代はどんな感じですか?

私が教えているのは、主に中学生の年代ですが、大検をとりたい年代も教えていますし、10歳前後の子供も教えています

━みな、不登校の子供たちですよね

はい、そうです。学力だけは、他の子供たちに負けないようにしたいという親御さんが多いので、幅広く、学校に通っている以上に学力を身につけさせてやりたいと思っています。基本的に不登校の子供たちは、普通に学校に通っている子供に対して、劣等感をどうしても感じてしまうので、学力の面だけは自信がつくようにしたいと思っています。

━その情熱が子供さんに伝わるんでしょうね。不登校の子供を教える上で気をつけていることは?

気をつけようとは考えていないですね。逆に不登校は別に駄目なんじゃないよ、こういう道をあるんだし、社会に出るときに、十分な学力があればいいんだし、いまはいろんな方法があるから。変に意識してやると、子供は感じ取りますからね。劣等感とか、自分は駄目人間なんだと思わないようには気をつけてます。子供たちが不登校を解決して、学校とか大学とかに行くときに困らないようにしなくちゃいけないという使命と責任感はもちろんもってますよ。

━心を閉ざした子供にどういう言葉を投げかけているんですか?

同じ目線で、子供たちのやることを主に話題にしてますね。だから私は、普段やらないテレビゲームをやるようになりましたし、あのゲームおもしろいな、あれはどうやって攻略するんだ、と聞いてます。そうすると子供たちは食いついてくるんですよ。ゲームソフトの貸し借りを普通に子供たちとしていますし、先生、あのゲームおもしろいよ、あれクソゲーだよと言ってくれたりして、話が弾みますね

━確かにゲームというのは一つのコミュニケーション手段ですね。わざわざ、そのためにテレビゲームを買ったんですか?

ええ。もともと自分の子供にはゲームをやらせない主義で、自分でもなんであんなのがおもしろいんだと不思議に思っていたんですよ。でも、不登校の子供が一番食いつく話題が、ゲームなんですよ。漫画もそうですけど、だから、ゲームと漫画、子供たちが見るような番組は必ずチェックしてます。

━ということは、最初はコミュニケーションに苦労したと言うことですね

そうなんですよ。これは厄介だなと。どうしたら子供たちが自分の言うことを聞いてくれるのか、やっぱり勉強というのは、教える側と教わる側が信頼関係で結ばれていなければ、やる気も無くしてしまうのものですから。いろいろ苦心して、ゲームというのがキーだなと思いました。自分の子供にもゲームを通して、前よりも話すようになれましたし。

━そういえば、親は子供のテレビゲームをやめさせようと苦労しているんですが、逆に一緒にやると言うこともいいですよね。不登校とか引きこもりの問題でよく聞かれるのは、ゲームをどうにかやめさせたい、ゲームを一日やらせるために、不登校を許したんじゃないということですね。

ゲームの話題をしたら、全然食いつきが違うんですよね。目が輝いてくるんです。あ、これだと思って、すぐプレイステーションを買いましたよ。今じゃ、任天堂とソニーの奴と携帯ゲーム機もすべて持ってます。勉強効率も全く違ってきましたし、とっかかりとして最高の手段でした

━子供は同じ目線で話してくれる大人の存在が欲しいのかもしれませんね

そのとおりです。対話できる大人を求めているんですよ。親子の関係はそれとは違う種類のものだし、学校の教師だと生活指導がどうだとか、いまは終わっている教師も多いですからね。私は教えるというよりは、子供と一緒になって勉強に取り組む、そのためにはゲームをたくさんして、テレビをたくさん見て、それでいてちゃんとやるべきときに勉強をしなさいと言っているんです。共通の土台が子供とできあがっているから、勉強嫌いの子でも、私と話がしたくて、一生懸命宿題をやってきてくれるんですよ。アメとムチの使い分け、とりわけ、不登校の子供はうまい具合にアメを多くやらないといけないと思います。

━その使い分けは難しそうですね。宇田川先生だからできることかもしれません

これは経験で身に付くことがありますから

━先生はスクールカウンセラーの役割も同時にやっているんでしょうね

時々そう思います。誰で荒れ、カウンセリングはできるものなんで。臨床心理士だけがやるべきものではないですよ

━中学、高校と通えなくなった子供が、巻き返すのは、大検の資格を取って、大学にはいるという道がありますね。また通信制の高校にはいるとか

ずっと先生のところに通いたいと言ってくれます。だからうちでは大検をとって、高校には通わない子供が多いですね。実際、上智大学とか慶応大学に通っている子供いますから

━では、学力の面で、不登校の子供が抱える問題は教えてください

やる気がなくなっていて、勉強をやる意味とか意義を見失っていますね。目標が無くなっているので、どうしても学力が落ちてきてしまう

━逆にある部分の知識だけがものすごくて、一般教養では全然というケースもありますね

そうです。三国志だけすごく知っていて、数学が全くわからない、英語も駄目、三国志の能力を生かせばものすごいことになると感じますね。要はやる気の問題で、能力的な問題は不登校の子供は逆に他の子供より、あるくらいですよ。うまくみちびくのが、われわれの責任だと思います

━学校の教師では難しいですか?

中にはいい教師もいます。でも、大部分がだめですね。子供も親しくなると、もう担任とかの悪口ばかりですよ。私の時なんかまだ教師に権威があったから驚くほどですが、いまいろんな事件がありますよね。あんなことをしていたら、駄目ですよ。もう子供は学校の教師をバカにしていますよ。口に出さなくても、軽蔑していますし。だから、少数の立派な教師までそう思われるとやる気もなくしていくでしょうし、すべてが悪い方向に行っていると思います。だからこそ、私たちの存在が大きくなるので、頑張らなきゃいけないと思っています。

━ありがとうございました

 

インタビュー後の感想

問題を抱える子供の心をつかむのがうまい人だと、実際感じました。たしかに子供の立場でものを考えられる人で、子供たちも話していて楽しいんだろうなと思いました。
カウンセリングは、専門家だけのものではないという言葉が印象的でした。

不登校問題 インタビュー・対談集