なんで息子が不登校になったのか、原因が全くわからないという親が多くいた(スクールカウンセラーでも同じケースが多い)。原因がわからないと人は心理的になかなか耐えられるものではない。出口の見えないトンネルに入り込んでしまった状況の上、なんでトンネルにいるのかさえわからないと言ったところだろう。人は、他人の心情を正確に捉えることができない。親子といえども、双子といえでも、相手の悩みの深さをそっくりそのまま知ることはまず不可能なのかもしれない。ましてや、心が繊細で、まだ定まりきっていない子供の心のトラブルである。しかも、一般の子供の思春期特有の悩みといった類ではない。子供の方も原因がわかっていないでもがき苦しむことも多い。何で自分の心がこんなになってしまったのか、わからないからこそ、苦しむ部分も大きい。単純に子供が親に理由を言いたくないと言うこともある。プライドの高い子供にとっていじめや友達とのいざこざなど言いづらいこともあるだろう。

今の不登校問題は単純じゃないため、親の力だけでは解決させてやることは難しくなっている。はじめてカウンセラーや医者、専門家に相談して子供が神経症的不登校だったことがわかる。実は神経症的不登校で、不登校をほとんど説明できるといえるかもしれない。神経症的不登校は、神経症が改善すれば不登校が解決すると言えるだろう。が、じつはこの神経症の問題が非常に厄介なのだ。

神経症は心の悩みが複雑化、重症化したもの(決して精神病ではない)と定義できる。だが時間が解決してくれるような甘さはない。さらにうつ病やひどい場合、統合失調症にまでなってしまう場合もある。これも時間が勝負だと言われる。思春期の時期に神経症(的不登校)を経験すると、どうしてもその枠の中でしか物事をとらえられなくなる。マイナス思考や人間不信、自信喪失の経験だけが積み重なってしまうのだ。

神経症的不登校の場合、やぱり専門家に相談した方がいい。しかし、重大な問題がある。精神科や心療内科で薬を出される。実はこの薬は未来がないものだ。いわゆる対症療法にすぎなく、薬の減弱効果で、不安が一時的に治まっても、また不安が襲ってくるケースが非常に多い。その不安を抑えるためにさらに薬を強くしたり大量に飲むことで、不安を打ち消そうとする。もうこうなれば、立派な薬依存になってしまい、その際の副作用は日常生活の質を(QOL)を破壊するほどである。薬のをんでもQOLが破壊され、飲まなくてもQOLを保てない。どっちにいっても同じ結果となる。では、飲まない方が副作用がないだけいいかというと、そうなったら飲まないこと自体不安になってしまう。だからずっと飲み続けてしまう。はっきりいって、社会で仕事をこなすことは困難になる。解雇とまでいかなくても、閑職へと追いやられる可能性が高くなる。これは脅しではなく、薬物療法に依存してしまった人たちの実例である。

十代でたまに睡眠導入剤を服用するというならまだしも、抗うつ剤・精神安定剤などに強く依存するとなると、倫理的な問題も絡んでくる。不登校を克服していずれは社会に出て欲しいという親の願望とは全く逆の薬漬けのずっと布団に潜って一日を過ごす結果になったら悲惨である。が、そうなっている家庭が多いことを報告しておきたい。

カウンセリングは、子供とカウンセラーの間に信頼関係が成り立ったときに、非常に有効だろう。とくに悩みの初期段階で信頼できる力のあるカウンセラー・セラピストに出会えば、すぐ学校に復帰できるケースがある。悩みをはなせる相手がいないことは、心に抑圧と鬱憤をつくってしまい、それにがんじがらめになってダウンしてしまう子供も、そんな相手がいるだけで、それ以上の悪化は防げるのである。ここで問題点に言うと、問題が悪化したときに、カウンセリングだけではどうしても力不足になってしまうと同時に、そういう子供は人間不信の固まりに陥っているため、信頼関係が作りにくい。さじを投げるカウンセラーも多い。こうなれば、子供は殻に閉じこもることになり、さらに難治化してしまうのだ。

いかに心の問題が厄介なものか、取材を通してあらためて思い知らされた。子供の不登校問題が、親の神経症に直結してしまう。親は、特に母親に多いが、うつ病や自律神経失調症、摂食障害、不眠症、心身症に苦しめられる。不登校問題は子供だけの問題ではなく、家庭全体の問題といわれるゆえんだろう。子供の神経症的不登校が解決しない限り、親の神経症も解決しない。社会で言われている学校に通う、通わないという不登校問題ではとらえきれないほど、大きな問題を(神経症的)不登校問題ははらんでいるのである。